僕はこれまであまりオペラというのをきいてこなかったんですが、最近になってちょっと聴くようになりました。
それで、YouTubeなんかで映像と合わせて観ていたんですが(有名どころを)、結構面白くて、ひたすらきいてました。
今日とりあげるのは「夜の女王のアリア」ですが、これはテレビなんかでも世界で数人しか歌えないなどといって紹介されてるのをみたことがあるし、有名な曲ですよね。
あ、さきに断っておきますが、僕はこの曲のテキストを全部読んだわけではなく、話の筋も完全に把握しているわけではないので、微妙なところをとらえきれられてないかもしれません。まあだいたいのところということでご了承ください笑
モーツァルト作曲夜の女王のアリアをドイツ語できく
僕はオペラをよく知らないので総括的に書くことはできないのですが、オペラで歌われる歌というのは場面を説明的に歌うレチタティーヴォと役の感情を歌うアリアのふたつに大きく分けられます。
で、この曲はモーツァルト作曲のオペラ「魔笛」に登場する夜の女王(Die Königin der Nacht)のアリアというわけです。
夜の女王のアリア
Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen,
デル ヘル ラッヘ コホト イン マイネム ヘルツェン
Tod und Verzweiflung flammet um mich her!
トート ウント フェルツヴァイフルング フランメット ウム ミッヒ ヘル
Fühlt nicht durch dich Sarastro Todesschmerzen,
フュールト ニヒト ドゥルヒ ディッヒ ザラストロ トーデスシュメルツェン
So bist du meine Tochter nimmermehr.
ゾー ビスト ドゥー マイネ トホテル ニンメルメール
Verstossen sei auf ewig,
フェルシュトーセン ザイ アオフ エーヴィヒ
Verlassen sei auf ewig,
フェルラッセン ザイ アオフ エーヴィヒ
Zertrümmert sei’n auf ewig
ツェルトリュンメルト ザイン アオフ エーヴィヒ
Alle Bande der Natur.
アッレ バンデ デル ナトゥール
Wenn nicht durch dich Sarastro wird erblassen!
ヴェン ニヒト ドゥルヒ ディッヒ ザラストロ ヴィルト エルブラッセン
Hört, Rachegötter, hört der Mutter Schwur!
ヘールト ラッヘグッテル ヘルト デル ムッテル シュヴール
カタカナはだいたい似ているというところで、微妙なところもあるんですが、ご承知ください。
歌詞の意味
Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen,
der Hölle Rache 地獄の復讐
散文で書くならdie Rache der Hölleとなるところ
Hölleは英語のhell
kocht(不定形kochen)は英語のcook 比喩的に沸きたつ、激昂する
in meinem Herzen 我が心のうちに
Tod und Verzweiflung flammet um mich her!
Tod und Verzweiflung 死と絶望
flammet(不定形flammen) 炎が燃える、比喩的に憤る、激する
um mich 私の周りに
herはflammetと対応しているもので、元は向うからこちらへという意味。ここでは死と絶望なので物理的ではないけれどもそういうイメージはあると思われる。
Fühlt nicht durch dich Sarastro Todesschmerzen,
fühlt(不定形fühlen) 感ずる
nicht durch dich お前によって〜ない、durchはここでは英語で言うby等で、誰によってという意味。
Sarastro ザラストロ(人名)
Todesschmerzen 死の苦痛
ここは散文ならWenn Sarastro nicht durch dich Todesschmerzen fühlt,
となるところ。もし〜であるなら。ここでは、もしザラストロがお前によって死の苦痛を感じないのであれば、という意味。
詩ではこのような省略や散文ではない順序の入れ替えがまあよくあります。
So bist du meine Tochter nimmermehr.
so (前の文を受けて)そうならば
bist du ~ nimmermehr お前はもはや〜でない。nimmermehrは可なり強い否定。
ゲーテのGretchen am Spinnrade(糸を紡ぐグレートヒェン)に
ich finde sie nimmer 私はやすらぎをもう見つけない
und nimmermehr. 決して
という箇所がありますが、ここでも非常に強い否定を表しています。
Verstossen sei auf ewig,
verstossen ここでは過去分詞 斥けられた(状態)
sei sein(英語to be)のちょっと難しいんですが、接続法第一式というもので、下のalle Bandeに対して〜であれ!という命令をしているといったところ
auf ewig 永遠に
Verlassen sei auf ewig,
verlassen 過去分詞 見棄てられた
Zertrümmert sei’n auf ewig
zertrümmert 過去分詞 粉々にされた ここだけsei’nという形になっていて、丁寧な物言いに見えるんですが、理由は不明笑
Alle Bande der Natur.
すべての血縁 これが僕はなんとも難しいと思うのですが、die Bande der Naturで血縁を表すようです。das Bandというのは絆、縁。die Naturは自然
どうやら成句として血縁を表すようですが、ここでは母娘のやりとりですから、血縁が当時ウィーンあたりでどういう意味を持っていたのか知らないと理解が難しいような気がします。
Wenn nicht durch dich Sarastro wird erblassen!
上で結果を言っているわけですが、ここはもし〜ならば!
erblassen 青褪めること。比喩的に、死ぬ。
wird は未来の助動詞 死ぬことにならなければ
Hört, Rachegötter, hört der Mutter Schwur!
hört きけよ
Rachegötter 復讐の神々 Götterというとギリシャ的な感じがありますね笑
der Mutter Schwur 母の誓言 散文ならder Schwur der Mutter
きいてみよう!
というわけでだいたいの意味が知れたので実際にきいてみましょう!
歌はオランダの歌手のドイテコム
僕はこの人の魔笛が好きで最近ずっと聴いています笑
コロラトゥーラとメリスマ
わざわざ言わなくともこの曲は歌うのが難しいので有名ですが、途中に箇所あるように速く技巧的な歌を特にコロラトゥーラといいます。ここまでくるともう超絶技巧ですね笑
で、聴いているとわかるのですが、技巧的なところは歌詞が途切れてああああああなどと母音で聴こえると思いますが、これは歌詞がないのではなく、ひとつの歌詞がながーく伸びています(前半nimmermehrのところは実際どうか知らないけどmehrが伸びているかあるいはここは歌詞を欠いているか(嗤い声的ではある)•••)。こういうのをメリスマと、多分いっていいと思います笑 多分が多い笑
そもそもグレゴリオ聖歌以来歌の歌詞と曲(音)の関係には3つのパターンがあります。
第一にひとつのシラブルに対して、ひとつの音が当てられるシラブル型
・・・シラブルというと難しいのでとりあえず母音と考えてください。
第二にひとつのシラブルに対して、2〜4の音が当てられるネウマ型
第三にひとつのシラブルに対して、それ以上の音をつけるメリスマ型
まあ正直にいうとオペラにどこまでこの区分をあてはめていいのか知らないのですが(笑)、伝統的にはそうなっていたわけです。
ここでは形も効果もメリスマ的だといえると思います。
技巧的なところは音形が歌というよりは器楽的で、とくに後半は反復進行を含んで超人的な感じさえします。
余談
上にも書きましたが僕はこれまでオペラをあまり聴いてこなかったのですが、きいてみるとこれが面白くて色々と聴いてみたくなります。
魔笛の中には女王の他にも多くの登場人物があって、パパゲーノとかいう面白い役が出てきたりします。パパゲーノのアリアもいい曲
あ、あと夜の女王は前半登場するときにもレチタティーヴォとアリアがあるのですが、僕はどちらかというとそっちの曲のほうが好きです笑 そこでもアリアはコロラトゥーラ的です。
で、それぞれのアリアが面白いので、テクストを読んで全体の筋を把握しようと思ったのですが、台本を手に入れるのが難航して結局まだ手に入れていません。
まあだからなんで夜の女王がここまで怒っているのかよくわかっていない笑
僕は耳がよくないんで、オペラのセリフを聴いても理解不能です。特に歌は技巧的な箇所なんかはほとんどなにもわからない笑
図書館なんか探したんですが、オペラの台本っておいてないんですね。
台本つくったのが有名な人なら別なのかもしれませんが。
あるいは音楽大学の図書館なら別なのかもしれませんが。
そう、それで気になったのがこの当時のオペラ事情というのはどれくらい研究されているものなのか。
モーツァルトの時代もオペラといえばイタリアのもので、イタリア語で書かれていたものですが、実際モーツァルトもイタリア語のオペラつくっていますしね、それがドイツでどのくらい演奏され親しまれていたのか。そして魔笛のようにドイツ語で書かれたオペラというのがどれほどあったのか。その辺の研究があれば面白そうなので読んでみたいですね。
魔笛は晩年ウィーンで作られたんでしょうが、ドイツの方ではどうだったんでしょう。まあおそらくあまり盛んじゃあなかったでしょうね笑
というわけでモーツァルトの魔笛から夜の女王のアリアをきいてみましたが、歌詞をみてみると意外だったという人もいるのではないでしょうか。
僕もここまで怒っているとは思っていませんでした笑
魔笛が気になった方はチェックしてみてください。
僕はこれを気に色々なオペラのアリアをきいてみようかなあと思っています。
何かおすすめの歌があったら教えてください。
では今回はこの辺で。
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