僕は諸事情あってたまに遠出するんですが、・・・まあみなさんも諸事情あって遠出するでしょうが、その目的地には大きな川がありまして、これが延々と流れているのですが、その川にかかる橋のうち僕がよく通るものがあります。
これがその橋から撮った写真です。
この日は快晴で気持ちのいい日でした。
水の白くにごっているのは雪解けの季節だからでしょう、普段はもっと黒っぽい色をしています。
でもそれが春らしさをより強めて、穏やかな日差しとまだ少し冷やりとした風とともに僕の目には最高の風景として映りました。
どの場所にもその土地ならではの早春賦があるんでしょうが、この土地の早春賦はまさにこの日あったかもしれません。
ところで話はこの橋にあるのですが、上に書いたとおり僕はこの橋をよく通ります。
この記事のサムネイル画像になっているのもこの橋です。
単に目的地までの途中にあるということもあるのですが、もう一つはこの記事にも書いたとおり古本屋があるから。
古本屋の様子についてはこの記事を読んでください。
で、そうだ、僕はそのばあさんの店も好きなんですが、今度行ったときも、行った日は定休日だったんで、2日後くらいにまた行ったんですが、その日も閉まっていました。
古本屋っていうのは概して乱暴なんですが、このばあさんは最も乱暴なやり方ですね。
ただばあさんなんで、ちょっとその身が案じられるところもあります。
もう一軒の方はやっていました。
その日は時間がなかったんで、外の安い棚だけざっと見たんですが、不幸なことによい本がたくさんあって厳選したのに7冊も買ってしまいました。
そのうちの一冊が古い本で(まあ全部古いんですが)、箱の紙がなんというか天地無用の状態で張ってあります。
見てもらったほうがはやいですね。
これだけみると問題ないように見えますが・・・
この通り
”どうやったら”こんな間違いが起こるのかと不思議に思いましたが、先生はprotestだといっておりました。
この本を含む7冊を店主のところへ持っていくと、「これわかってますよね」といいます。
最初なにをいっているのかわかりませんでしたが、この表紙のことをいっているようなので、「表紙のことですか。はい、それが面白いんで。」と僕は答えました。
店主は「昔は・・・」とかなんとかいっていましたが、とにかく、僕はこの店を後にしてからこれを思い返して、
”それが面白い”とは全体なんのことかと恐ろしくなりました。
はい、前置きが大層長くなりましたが、その買った本のうちに特に面白いものがあったんで紹介します。
記事の題でわかっていると思いますが、19世紀に出版されたものがありました。
それがこちら
Thomas Hardy(1840-1928)のFar From The Madding Crowdという本です。
ハーディはイギリスの、このブログでもちょっと話題になった自然主義の作家です。
なんといってもこの題がいいですよね笑
表紙を開くと、丸善の印と持ち主のサインがあります。
この古本屋は以前から英文学関係のものが多いので、このY.Noguchiさんというのは英文学者かもしれません。
これが時代を表していて面白いですね。
一応訳しておきますと、
此版は印度その他英国植民地(のみ)における流通のために企画せらる。
くらいのもの。
さてその本がなぜ日本の丸善で売られていたのか、Japan is one of the British Coloniesだったのかしれません。
出版社はマクミラン
この通り1894と年が記してあります。
今からおよそ123年前に出版された本ということですね。
1920年代くらいまでのものはたまに手に入りますが、それより前となるとなかなか珍しいんじゃないかと思います。もちろんたくさん存在はするでしょうが、楽に(格安で)手に入れられるものではない。
ヨーロッパのものは第一次世界大戦の影響もあるでしょう。
ちなみに二次大戦下の日本の書籍は戦争の影響を直接受けているのが見ていてわかります。
そのうち機会があれば紹介しましょう。
今回手に入れたものでもう一冊英国のものがありました。
これもいい本なので紹介します。
刻印されているのは出版社(J.M.Dent & Sons)のマーク。
この本はEveryman’s Libraryというシリーズのうちの一冊です。
背表紙
画像ではわかりませんが、もともと背表紙の文字は金文字だったようです。
中身はイプセン(ノルウェー人)の英語訳。
有名なDoll’s House(人形の家)の他、The Wild Duck、The Lady From The Seaの二編がはいっています。
表紙を開くと美しい飾りがあります。
書かれている文字はちょっと見にくいですが、
EVERYMAN,
I・WILL・GO・WITH
・THEE.
&・BE・THY・GVIDE
IN・THY・MOST・NEED
TO・GO・BY・THY・SIDE
・・・韻文ですね。
このGVIDEというのが僕にはちょっと何なのかわからないのですが、
全体をみると、
すべてのものよ、
われ汝とともに行かむ。
そして汝が旅路の
最もよき伴侶とならむ。
くらいの意味になりそうです。(訳しにくいので意訳です)
右ページのマリア的女性が、このGVIDEの表れとみてよいでしょうか。
題のページも非常に美しいです。
版についてはこんな具合
相当売れたようですね。
人形の家はベストセラーですから、岩波や新潮(矢崎源九郎訳)で今も出版されています。
僕はどうもイプセンを日本語では読む気になれなかったのですが、英語ならまあ読めるかもしれません。
上のハーディのものは今おそらく出版されていません。
今回は100年ほど前の英国の本を紹介しました。
昔の本はつくりが丁寧で印刷の美しいものが多いのですが、それがよく伝わったのではないでしょうか。
こういうものがあるから古本道はやめられません笑
それに普段本を読んでいて、版や出版年に注目しないかと思いますが、そういう本文以外のところにもちょっと目をむけると面白いですよ。
みなさんの持っている本で何か面白いものはありますか?
あったらぜひ教えてください。
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