へえ、恋ってこういうものなの?(藤村の「若菜集」を読む)

島崎藤村

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どうも、常にうつらウツラしているきつねです。

【タイトルオチ】要するにみんな僕と一緒に楽しく読書しようということがいいたい。 

この記事で読書を推奨したものの、それだけではあまりに観念的で、わざわざ読んで気分を害してくださったかたにとっても、今一つ実感の湧かないところでしょう。

というわけで、僕の読んだ本、あるいはこれから読む本について、今後記事にしていこうと思い立ったわけです。

このブログで書くものが、普通のブログでよくみるところの”書評”にあたるかどうか、僕自身そういうものをあまり読まないからわかりませんけれど、とにかくきつね流のそれとして読んでいただきたい。

日本近代抒情詩の夜明けを告ぐる、「若菜集」を読む

なにか作品を読むにいたるにはいくつかのパターンがありましょうが、僕が若菜集を読むに至ったのには僕としてはちょっと面白い経緯があります。

それについてここで書くとあまりに長くなるので、それは今度の機会に回すとして本題に入ります。

若菜集

著者はご存知の通り島崎春樹(藤村)です。

若菜集を発表した当時(明治30年)、25才の時ですが、まだ藤村ではなく、本名の春樹の名を使っていたようです。

詩は日本の伝統的な七五調で作られていますが、西欧ロマン詩の感覚を取り入れているようです。

なんといっても恋愛の詩のインパクトが強いですね。

女性の名が連なる

作品の始め、ずっと女性の名を冠した詩が連なります。

おえふ、おきぬ、おさよ、おくめ、おつた、おきく

という時代を感じさせるラインナップ・・・

これらは女性目線で恋を歌った、俗にいう乙女チックなものですが、当時そのところを揶揄されたようです。

女性の目線でうたうなんて僕にはちょっと考えられないですね。

というかこの詩集全体の感じ自体、僕の乾ききった心からは全くうまれえないものです。

例に有名な「初恋」をあげましょう。

初恋

初戀

まだあげ初(そ)めし前髪の

林檎のもとに見えしとき

前にさしたる花櫛(はなぐし)の

花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて

林檎をわれにあたへしは

薄紅(うすくれなゐ)の秋の實(み)に

人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの

その髪の毛にかゝるとき

たのしき戀の盃(さかづき)を

君が情(なさけ)に酌みしかな

林檎畠の樹(こ)の下に

おのづからなる細道は

誰(た)が蹈(ふ)みそめしかたみぞと

問ひたまうこそこひしけれ

※ ちょっと読みにくいですが、一応難しいと思われる漢字に()で読みをつけておきます。

う~ん、非常な潤いがありますね。

僕はこれ確か中学の教科書で読んだのですが、みなさんはどうでしたか?

高樓

”たかどの”という詩があります。

これは題のあとに

わかれゆくひとをおしむとこよひより

とほきゆめちにわれやまとはん

とある通り別れのうたで、

嫁に行く姉とそれを送る妹の会話でなっています。

”おしむ”は”をしむ”の誤りでしょう。

この歌は戦中、一緒に工場で働いていた友が戦地に赴く時、(確か)女学生が中を少し変えて(”わがあねよ”のところを”わがともよ”に)使ったのが有名になったようですが、ちょっと記憶が曖昧で詳しいことがわかりません。後で確かめておきます。

全部のせると長いので初めだけ

 高樓

   わかれゆくひとをおしむとこよひより

         とほきゆめちにわれやまとはん

とほきわかれに

たえかねて

このたかどのに

のぼるかな

かなしむなかれ

わがあねよ

たびのころもを

とゝのへよ

わかれといへば

むかしより

このひとのよの

つねなるを

ながるゝみづを

ながむれば

ゆめはづかしき

なみだかな

(つづく)

高樓などというと李白の「黄鶴樓送孟浩然之廣陵」を思い浮かべますが、あるいはこれの影響があるのかもしれません。(孟浩然は春眠不覺曉のあの人)

”かし”の用法

若菜集は文語調ですから、現代人にはやっかいな助動詞やなにやらがちらほらあるのですが、そのなかで僕の目についた”かし”の用法についてちょっと書いておきます。

”かし”は広辞苑によると

(詠嘆の助詞カと強めの助詞シとの複合した終助詞)文の普通の終止、または命令の終止に付いて、念を押し意味を強める。

とあります。

竹取の例、

はや殺し給ひてよかし

(・・・ 竹取にこんな物騒な場面ありました?笑)

平安以降主に会話に用いられたようで、室町以降は命令形に接続することが多かったようです。

若菜集では、多く命令形に接続していたと思います。

おわりに

とにかく青春の、潤いのあるものなので、心の涸れ果てた人(笑)におすすめです。

気になった人は是非読んでみてください。

初版本を底本にしたものがオンデマンドで手に入るようです。

(僕は初版本の復刻版で読みました。)

次回

この次はまだ決めていませんが、一葉の「たけくらべ」を読もうかなあと思っています。

まあ何を書くかはわかりませんが、すでに読んだ人も、読んでない人も、時間があれば”予習”してみてください。

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