日本では難解の代名詞ともいえるクラシック音楽・・・
僕としてはクラシック音楽というものは、みなさまのご想像通りに、およそ難しいものだと考えているのでそこを覆そうなどとは思いません。
が、演奏家やクラシック通の人がまあ色々と工夫を凝らしてクラシック音楽の高い敷居を下げようと宣伝する気持ちもよくわかります。
一般にクラシックと呼ばれるもの、芸術音楽と呼ばれるものは、大衆音楽と一線を画すところがあります。それは、感覚的なものではあるけれども、高度に文明(理性)の産物であるから。
まあこれだと大雑把が過ぎますが、とにかく簡単なものではありません。
ただ、クラシック音楽と一言にいっても様々な種類があるし、全てが全て難しいわけでもないです。
一人の作曲家の曲のうちにも
易しいもの、難しいもの、色々あります。
そこで今回は僕の思うクラシック音楽入門のポイントと、おすすめの曲をまとめてみます。
- クラシック音楽入門法とおすすめ曲
注:音楽のことだから、もちろん、個々人によって感じ方が違うし、僕とまったく違った感性の持ち主にはこれから書くことが通用しないかもしれない。
クラシック音楽入門法とおすすめ曲
作曲家には区分がある
作曲家は時代によって区別されていて、同じ時代の作曲家は作風も似ています。
ふつうクラシック音楽というとバロック後期からロマン派の西洋音楽をさします。
バロック以前はあまり聴く機会がありませんが、最近は中世ルネサンスの音楽がもりあがりつつあります。
とりあえず入門ということで、バロック後期からだいたいのところをまとめてみます。
(おおよその年代)時代名 代表的な作曲家
注:やや大雑把な区分ですが、詳細は問題にしません。
- (~1750)バロック バッハ、ヘンデル
- (1750~1827)古典派 ハイドン、モーツァルト、ベートーベン
- (1827~1890)ロマン派
前期ロマン派(~56)シューベルト、メンデルスゾーン、ショパン、シューマン
後期ロマン派 リスト、ワーグナー、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク
- (1890~)近代 フォーレ、ドビュッシー
作風により年代的には近代なのにもかかわらずロマン派に属するなどというややこしい作曲家も結構います、ここでは問題にしません。(ロマン派は後の時代までかなり尾をひくから、実際には1950年ころまで生きていたりする。)
僕の素晴らしい作図能力を使ってこれをわかりやすく表すとこうなります。
山の高さは別にモーツァルトがハイドンより素晴らしいというのを表すのではありませんが、僕の頭の中を色々綜合して表すとこんな風になります。
これは和声(ハーモニー)を中心にした音楽の盛り上がり具合を漠然と表したもので、
まずバッハが他の追随を許さない和声+対位法(わからない人は無視してください)による作曲で素晴らしい作品を書きました。
が、時代は先へ進み新しいスタイルの音楽ができます。それが古典派の音楽。
そして、それはベートーベンにより頂点に達し、ロマン派という野蛮な集団が生まれます。
ベートーベン以後はそれぞれ特徴はあるものの大体全員ベートーベンウィルスに感染したベートーベン症候群をわずらっています。まあそれだけベートーベンが凄いというわけ。
ベートーベン症候群を脱したのが、ドビュッシーなんかで、これは全く違う音楽。
図ではベートーベン以後右肩下がりになっていますが、実際は何度か頂点があります。
そのひとつがワーグナーで、なんか大変な音楽を書きました。
20世紀に入って無調の音楽などというものができて、和声の音楽は崩壊いたしました。
現代音楽は僕はあまり詳しくありませんが、クラシック音楽的な視点からするとちょっと理解に苦しむものが多いのは確か。
入門のポイント
上にも書いたとおり、一言にクラシックといっても色々なものがあります。
馴染みやすさと内容を多少雑に表すと
なじみやすいが、内容もあまりない
|
なじみやすく、内容もある
|
なじみにくいが、内容がある
となります。
僕としてはまず中間を狙っていくのがいいと思う。
はじめに上から入ると聴きやすいがつまらないのでそこで終ってしまう。
難しいものから入ると、全くわからずに終ってしまう。
だから微妙なところを狙う必要があります。
わかりやすくて内容のあるもの・・・
これが難しい。
例えばモーツァルトの音楽は親しみやすく内容もあるが、実際モーツァルトの良さを知るとなったらそれなりに難しいことだと思います。ロマン派好きでモーツァルトがわからない人は結構多い気がします。
別にロマン派が好きならモーツァルトを聴く必要はないし、好きなものを聴いていればいいとも思いますが、全体を見渡せるようになるに越したことはありません。しかしまあそれは最終目標です。
というわけで色々と踏まえて入門のポイントをまとめてみます。
1、バロック後期から前期ロマン派を中心に据える
クラシック音楽はベートーベンを中心にしたものなので、その周辺から始めるのがおそらく妥当。
2、とりあえずまんべんなく聴いてみる
好きな作曲家・曲は、個人の趣味によって本当に差がでるので、とりあえず色々きいてみるとよい。ベートーベンだけ聴いてやめてしまうのはもったいない。
3、しかし、ざっと聴くだけでは結局よさがわからないので、気になるものはとことん聴いてみる
個人的な話ですが、当初これを肝に銘じていたので、どんなにつまらないと思っても十回は聴くようにしていました。十回聴くと、つまらないと思っていたものでも、だいたい面白くなる。
4、難しいものは避ける
これは上に書いたとおり。初心者は選ぶのが難しいと思うので、僕が以下に厳選します。
5、長大なものは避ける
クラシック音楽は時代を経るにつれて曲の長さが長くなる傾向があります。
聴き始めの頃はあまり長いものより、短めの曲を選ぶとよいと思います。
ワーグナーなんかには上演に4日(15時間)かかるものなんかがあります。僕はさすがにやりすぎだと思う。
6、わからなくても気にしない
クラシックは西洋の音楽、文化で、
日本人には、昔ほどではないとはいえ、依然違和感の強いものだから、
僕はわからなくて当然だと思っています。
大体なんでもそうですが、物事に反感を持つのは、自分はなんでもわかると思っているからです。
というわけで、以上を踏まえて曲を紹介していきますが、
普通クラシック入門の曲で扱われるのは確かに名曲で、大体その作曲家の代表的な曲ではあるのだけれども、入門にはどうなんだろうと思われることも多い。
そこで、今回は代表曲いくつかと、その他に僕のおすすめの曲を示します。
思い当たる名盤があれば示します。
バッハ(1685~1750)
ポリフォニー(多声音楽)という特殊な音楽を膨大につくった。
代表曲
平均律クラヴィーア曲集
(第一巻から第1番)
※全てyoutubeのリンクにするとページが重くなるので、おすすめの曲のみ動画にします。
Itunesは▶を押すと試聴できます。
バロックの時代はチェンバロという鍵盤楽器が盛んに使われていました。
これがチェンバロの音
マタイ受難曲
多分聴かないほうがよいです笑 全部聴くと3時間ほど
これがバッハ特有のコラール(ルター派の聖歌)という形式
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
パルティータ第3番
バイオリン一本で演奏する曲(無伴奏曲)
バッハの無伴奏曲は他にチェロとフルートのものがある。
音楽の捧げもの
ネット上で話題になったらしいが、難しい音楽
対位法という技術を駆使した複雑な曲、しかし非常に感動的でもある。
おすすめの曲
バイオリン協奏曲第2番
BWV1042 Violin Concerto No.2 in E Arthur Grumiaux 1978
バイオリン グリュミオー
バイオリン協奏曲というのはバイオリンをソロ(独奏)楽器にした曲。
華麗な技を楽しむ。
ブランデンブルク協奏曲第2番
Bach Brandenburg Concerto No 2 in F major, BWV 1047 mvt1 Allegro moderato D°,Karl Richter
バロック時代盛んだった、コンチェルト・グロッソという形の協奏曲。
ソロの楽器が複数ある。
管弦楽組曲の第3番の第2楽章は有名なアリア
バッハ 管弦楽組曲第3番G線上のアリア(Berlin Philharmonic Orchestra)
指揮フルトヴェングラー
モーツァルト(1756~1791)
当時から神童の名高くヨーロッパ中で有名であった。 明るいものが多い。
代表曲
フィガロの結婚
オペラ(歌劇)というジャンル
歌曲と器楽曲と劇が一緒になったもの
交響曲第40番
有名な冒頭
モーツァルトの交響曲は有名なものがいくつかある。
ピアノ協奏曲第20番
ピアノ協奏曲はピアノを独奏楽器とする曲
この曲は非常に深い感情をもった曲
おすすめの曲
ピアノソナタ第10番
Krystian Zimerman plays Mozart Sonata No. 10 in C Major, K 330 (Complete)
ピアノ ツィマーマン
モーツァルトのピアノ曲はこの世のもっとも貴重な楽しみのひとつ
バイオリンソナタ第24番
Mozart – Violin Sonata No. 24, F Major, K. 376 [Szeryng/Haebler]
バイオリンソナタはバイオリンとピアノのための曲。
ピアノは伴奏ではなくバイオリンと対等であることが普通。
ベートーベン(1770~1827)
皆さんご存知クラシックの目玉 第九交響曲等で永遠の生命を得て以後彼の精神はヨーロッパ中をうめつくした。
代表曲
交響曲第5番
冒頭のじゃじゃじゃじゃーんで最も有名な交響曲
運命を入門に聴かせるのは本当によくないと個人的に思っている。
ピアノソナタ第8番
ベートーベンの曲は激しいものが多いが、たまにこういう非常におだやかで優しい、美しいものがでてくる。
弦楽四重奏曲第14番
この曲のようにかなり難解なものもある
おすすめの曲
ベートーベンは選ぶのが難しい・・・
上の熱情は聴きやすいかもしれない。
チェロソナタ第3番
Beethoven:Cello Sonata No.3/Yo-Yo Ma & Emanuel Ax
チェロ ヨーヨーマ
あまり頻繁にきかれるものではありませんが、隠れた?名曲。
チェロの幅の大きい音色とピアノの瑞々しさがここちよい曲。
ピアノ協奏曲第5番
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」変ホ長調 ホロヴィッツ/ライナー Beethoven (Piano Concerto No. 5 ” Emperor “)
冒頭の華やかな独奏が有名。
おだやかな第二楽章 が心に染みる曲。
シューベルト(1797~1828)
ドイツリート(歌曲)の天才 このジャンルでは他の追随を許さない。
代表曲
交響曲第8番
交響曲は 通常四楽章まであるが、この曲は第二楽章までしかない。
ピアノ五重奏曲「ます」
おだやかな第四楽章が有名な曲
おすすめの曲
歌曲 「野ばら」
Schubert Heidenröslein Peter Schreier
歌曲(リート)は聴きやすいですね。
シューマン(1810~1856)
非常に激するところと、この世のものとは思えぬ夢想が合い混じる。
僕はシューマンのロマンティシズムには共感を覚えるところがある。
代表曲
交響曲第3番
クライスレリアーナ
激情渦巻くなかに、暖かな光が差し込むような曲。
おすすめの曲
子供の情景
R.Schumann:Kinderszenen op.15 (シューマン:子供の情景 作品15)
トロイメライ(6:40-)は有名
ショパン(1810~1849)
感情の非常に豊かな作曲家、泣かせ上手。
ショパンは有名な曲でも聴きやすいものが多い。
代表曲
練習曲から「別れの曲」
有名 良い曲
ピアノ協奏曲第1番
人気のある ピアノ協奏曲
おすすめの曲
ショパンは聴きやすいものが多いので有名どころをあたれば間違いないと思う。
華麗なる大円舞曲
Ashkenazy plays Chopin (live) – Waltz in E flat major ‘Grande Valse Brillante’ Op. 18
ピアノ アシュケナージ
英雄ポロネーズ
Chopin Polonaise No.6 op.53 Cyprien Katsaris
僕はこの曲わかりやすくて良いと思うのだが、友人のうちには全くわからないという人もいた。そういうものなんだなあと思った。
ドビュッシー(1862~1918)
やや時代が隔たってしまうが、近代音楽の見本に
クラシックをあまり聴かない人でもドビュッシーを好く人は多い。
代表曲
海
バイオリンソナタ
海もこの曲も聴いてみると、上に並ぶ作曲家とは随分様子が違うのがわかると思います。
おすすめの曲
バイオリンソナタもいいですが・・・
前奏曲集
ドビュッシー: 前奏曲集 第1巻 ゾルタン・コチシュ
亜麻色の髪の乙女(22:10~)は有名
聴き始めが一番難しい
やっぱり慣れるまでが大変だと思います。
僕も今はもう慣れてしまいましたからなんとも思いませんけれど、聴き始めたころはものすごい違和感をもって聴いていましたね。クラシック的感性をあまり持っていなかったんでしょうね。
でもまあそれは聴いているうちに養われていきます。
今回は主に古典派と前期ロマン派をとりあげましたが、
気に入った作曲家・曲はありましたか?
僕はもう感覚がマヒしているので、みなさんどう感じるのか気になりますね。
ここに入っていない作曲家でも、
例えば
ハイドンの弦楽四重奏(ひばり等)
メンデルスゾーンの無言歌、バイオリン協奏曲
チャイコフスキーのくるみ割り人形、バイオリン協奏曲
なんか結構聴きやすいうえに名曲です。
これでクラシック音楽入門の助けになればいいのですが・・・
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