まず組曲の形式からおさらいしましょう。
バッハの無伴奏曲一連の記事
- 『こんなに面白い曲はない・・・バッハの無伴奏作品を聴く 』
- 『バッハ無伴奏の予習~組曲とパルティータの違いは?』←今ここ
- 『現代の楽器と昔の楽器を比較してみる 古楽復興とバッハ 』
- 『バッハ無伴奏バイオリンソナタ第一番をちょっと分析してみる。』
番外編
組曲とバッハの無伴奏作品
組曲
- アルマンド
- クーラント
- サラバンド
- ジーグ
というのが基本で
それに、”前奏曲”と”当時流行りの曲”が加えられるのでした。
舞曲のイメージを具体的にするために、個々の曲について引用やら何やらを書いてみます。
これは主に僕のメモからですが、このメモは確かビルスマのCDの解説からです。
アルマンド
16世紀フランスで起こった2拍子系の舞曲
「安らぎと秩序を楽しむ平和で、満ち足りた心情の映像」
マッテゾーン(音楽評論家)
ついでに実際の踊りもみてみましょう。
Allemande | How To Dance Through Time, Vol. 4 The Elegance of Baroque Social Dance
クーラント
普通クーラントと呼ばれる曲には
- フランス型・・・標準的、繊細な三拍子
- イタリア型・・・イタリア的変種、急速な三拍子
の2種類があります。
バッハは
フランス型を Coourante
イタリア型を Corrente(コレンテ)
として区別しました。
Baroque Dance Courante
サラバンド
三拍子のゆるやかで荘厳な感じのする舞曲
起源はおそらくメキシコで、16世紀初めにスペインに伝えられている。
第二拍目のアクセントが特徴。
Baroque Dance – Sarabande / Il Giardino Armonico
ジーグ
16世紀イギリスの舞曲ジグが、フランスとイタリアで発展したもの。三拍子系の速い舞曲。
鍵盤楽器なんかではフーガ的な曲が多く、
また後半の出だしが前半の主題の転回形であることが多い(これはまた後で説明します)
「いやでも、いわば最極端に速くならなければならない。しかし、大抵は流れるが如く、そして、決して騒がしくはない。それは小川のなめらかな急流に似ている」
(多分)マッテゾーン
Baroque Dance – Gigue / Il Giardino Armonico
凝った撮り方でちょっとみづらいですね笑
メヌエット
メヌエットは三拍子の曲で、二曲が対になります。
ⅠとⅡは性格的に際立ったものにつくられるのが普通で、
組曲は基本的に全楽章が同一の調でかかれますが、この場合Ⅱで同主調等別の調に移ることがあります。
「メヌエットの性格は高貴にして優雅な単純さである」
ディドロ(百科全書より)
ブーレ
17、18世紀のフランスの舞曲。速い二拍子。
「ガボットよりは流動的で滑らかさをもつ旋律」、
速いテンポにも関わらず、「安らぎと落ち着き」をもつ
マッテゾーン
ガボット
もともと民衆舞曲であったが、やがてバレエやオペラで重要な役割を演じるようになり、のちに組曲に用いられるようになった。普通四分の四拍子
「楽しく飛び回ることこそが、ガボット本来の特徴である」
マッテゾーン
メヌエット ブレー ガボット(J.S.バッハ、C.ペツォールト)
メヌエットとブーレとガボットが一度に見られて、しかも解説もついていていいですね。
踊りを言葉で説明するというのもちょっとよくない気がしますが、
これが意外と効果のあることで、これによってなんとなく曲の輪郭がつかめたりします。
ただ、曲の内容を言葉によって確かめるのはよいとして、
言葉の内容を曲に当てはめることはないようにしなければなりませんね。
では、次にいよいよバッハの無伴奏作品をみてみます。
バッハの無伴奏作品
まだ少し説明しないといけないことがあるのですが、とりあえずどんな曲があるかみてしまいましょう。
無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ
バッハの無伴奏バイオリンのための曲は全部で6曲で、
ソナタが3曲、パルティータが3曲です。
- ソナタⅠ ト短調, BWV1001
- パルティータⅠ ロ短調, BWV1002
- ソナタⅡ イ短調, BWV1003
- パルティータⅡ 二短調, BWV1004
- ソナタⅢ ハ長調, BWV1005
- パルティータⅢ ホ長調, BWV1006
組曲が一つもないじゃないか。
と思われたかもしれません。その通りです笑
とりあえず次に行きます。
無伴奏チェロのための組曲
チェロはすべて組曲です。
- 組曲Ⅰ ト長調,BVW1007
- 組曲Ⅱ 二短調,BWV1008
- 組曲Ⅲ ハ長調,BWV1009
- 組曲Ⅳ 変ホ長調,BWV1010
- 組曲Ⅴ ハ短調,BWV1011
- 組曲Ⅵ ニ長調,BWV1012
いまキーボードで”組曲”と打っていて気が付きましたが、組曲は全て右手で打たれますね。(どうでもよい)
無伴奏フルートのためのパルティータ
- パルティータ イ短調, BWV1013
フルートは1曲だけです。
組曲とパルティータの違い
見てもらうとわかる通り、純粋な組曲はチェロだけです。
じゃあなんで組曲だけわざわざ取り出して説明したかというと、パルティータは”ほぼ”組曲だからです。
今までに説明した組曲の形以外のものをバッハは組曲と呼んでいません。
パルティータは大部分が舞曲ですが、その形から外れており、また舞曲固有のリズムのパターンが守られていないことがあります。
パルティータには「メヌエットのテンポで」という楽章がある曲があって、つまりテンポはメヌエットだが、メヌエットではないという曲があります。
ということはパルティータは組曲より、音楽的、抽象的であるということになります。
この抽象化は古典派のソナタへの歩みであって、その証拠に、古典派ソナタの一楽章には舞曲の名残である繰り返し記号があります。
この点から見れば、無伴奏チェロ組曲のほうが、無伴奏バイオリンよりも先に作られた、とみられうるようです。
ソナタ
ここでいうソナタは古典派のソナタやソナタ形式とは違って、”教会ソナタ”とよばれるものです。
緩、急、緩、急の四楽章形式で、速い楽章ではフーガ的な手法が使われることが多いです。
バッハの無伴奏バイオリンでは、三曲ともほぼ同じ形をとっています。
それに関してはまた説明します。
参考
僕はこのCDを聴いて「ああ、バッハってこういうものだったんだ」と思いました。
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