こんなに面白い曲はない・・・バッハの無伴奏作品を聴く

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この記事からいくつかバッハの無伴奏作品に関する記事が続きます。

無伴奏作品を聴く助けになれば幸いです。

バッハの無伴奏作品を聴く

僕が初めてバッハの無伴奏作品を聴いたのは、たしか「名曲アルバム」という番組でした。この番組は5分しかないもので、この”しかない”というのはよい意味ですが、その中でバッハの”シャコンヌ”を初めて聴いたわけです。

奏者は堀米ゆず子さん。(2012年にドイツの空港でガルネリ(1億円位のバイオリン)を押収されて話題になった)

シャコンヌというのはだいたい15分くらいかかる曲で、5分間に収めるのは無理があるのですが、バイオリンを始めたばかりの僕はそれを聴いて、相当驚きました。いい表わすなら目と歯が顔面から飛び出るくらい驚いた。

バイオリンというのは普通、一時に一つの音しか扱いません。

つまりピアノのように一度に複数の音をださない。

出そうと思えばもちろん出せるのだが、基本的に音はひとつなわけです。

それが、このシャコンヌでは始めから、とんでもない技巧でもって、2つや3つや4つの音をこれでもかと使います。

それが、ただでたらめにたくさん音を鳴らすのではなく完全な音楽になるという不思議・・・

まあ、僕の話はこのくらいにしておいて早速作品にあたりましょう。

バッハの無伴奏作品

無伴奏というのは、伴奏が無い、つまり独奏(独りで奏す)という意味です。

どのような作品であるか、参考にニューグローブ世界音楽大事典(The New Grove Dictionary of Music and Musicians)のバッハの欄をみてみますと、

Bach’s creative powers appear in a special light in the sonatas and partitas for solo violin (BWV1001-6), dating from 1720, the suites for solo cello (1007-12), which stylistically preceede the violin works, and the sonata for solo flute (1013). They not only demonstrate Bach’s intimate knowlidge of the typical idioms and performing techniques of each instrument, but also show his ability to bring into effective play, without even an accompanying bass part,  dense counterpoint and refined harmony coupled with distinctive rhythms. In this he far surpassed all his perdecessors, both in the solo violin works (for example Westhoff, Biber and J.J.Walther) and the solo cello pieces (for example the solo gamba works of Schenck; there are no knowm works for solo cello before Bach). Bach’s experience in writing lute music must have stimulated the composition of the solo string works.

とあります。

英語がわからない人のために要しますと、「バッハはすごい」ということになります。

この解説に沿って少し詳しくみてみます。

dating from 1720

1720年というのは無伴奏バイオリンの自筆楽譜が書かれた年で、自筆譜はバッハの死後長らく行方知れずでしたが19世紀に発見されました。

1717年から1723年までバッハはケーテン(Köthen)というところで音楽好きの君主レオポルトに仕えていました。

ケーテンは音楽を重視しないカルヴァン派に属していましたから、教会音楽はつくられず、代わりに世俗的器楽曲がたくさん作られました。

They not only demonstrate ~ , but also show~

not only A, but also B 超重要英文法事項

dense counterpoint and refined harmony coupled with distinctive rhythms

これが無伴奏作品の最もみるべき部分で、楽器一本で表される対位法、

そして、和音が一度にではなく時間的に異なった部分で与えられる、これはちょっと難しいですが、読書における”文脈効果”、もしくは専門用語でいうところの”修辞的残像”に近いことをいっています。

これは実際にあたらないと理解できないと思うので、ここではこのくらいにしておきます。

In this he far surpassed all his perdecessors,~

無伴奏はバッハの発明ではなく、前例があったということですね。

しかし”先達を遥かに凌駕した”というわけ。

バッハは”先達を遥かに凌駕”するのが好きな作曲家です。

Bach’s experience in writing lute music must have stimulated the composition of the solo string works.

リュート音楽をかいた経験が無伴奏作品を生み出した、というわけです。

ただし、リュートの場合は無伴奏とはいいません。通常単旋律を扱う楽器が伴奏無しで頑張るから無伴奏なのであって、リュート、ギター、鍵盤楽器など和音を出すのが得意な楽器は論外です。

では無伴奏作品以前のリュート作品を確認してみます。

と、その前にリュートってなんなの?という人のために

リュートを探せ!

以下の絵には共通の楽器が描かれています。探してみてください。

どうでしょうか。楽器なんかが色々と出てきましたから、なかなか難しかったかと思われます。

では正解発表です。

はい、まあというわけで、わかりましたか、この洋ナシを縦に切ったような楽器がリュートです。

琵琶の仲間ですね。

それで、またニューグローブのリュートのところを見てみます。

The earlist work is the Suite in E minor BWV996, which dates from the middle of the Weimar period; it already shows a surprisinly balanced construction.

ほう、そうですか。

Suiteは英語読みでスウィート、組曲のこと

996が初めで、それはワイマール時代というわけです。

バッハがワイマールにいたのは1708年から1717年ケーテンに行くまでです。

その後の記述によると

999が、ケーテンか、ケーテンの去った後訪れるライプツィヒの初めに作られたのを除けば後は全てライプツィヒで作られたらしい。

というわけでとりあえず”996″をちょっとみてみましょうか。

その前に・・・

組曲とは?

バロック時代の組曲というのは、

同一の調でかかれた舞曲(的性格をもった楽曲)が組み合わされたもので、

バッハの場合は

  1. アルマンド
  2. クーラント
  3. サラバンド
  4. ジーグ

というのが基礎になります。

バッハはさらにこれを拡大します。

  • アルマンドの前に特定の舞曲のリズムによらない自由な形式の楽曲を前奏曲として附加
  • サラバンドとジーグの間に、当時流行っていた新しい舞曲、ブーレの他メヌエット、ガボット、パスピエ、ポロネーズ等(フランスのバレエ発祥のものが多い)を挿入

アルマンドなんかは古いもので、すでに様式化して舞曲の性格を失っているのに対して、随意に挿入されるものは、当時実際に踊られていたものですから、踊りの性格が強いので、その対比もききどころでしょうか。

組曲というのは字をみるとどうもフランス発祥のようですが、面白いのはアルマンドで、

というのもアルマンドというのはフランス語で”ドイツの”という意味なのです。

辞書にも(une) Allmande でアルマンド、ドイツ舞曲と載っています。

バッハはドイツ人ですから、つまり、日本人がJapaneseなどという曲を作っているようなもの

リュート組曲 ホ短調 BWV996

僕の手元にあるリュートのCDはユングへ―ネルという人のもの。

それに従って構成を見てみます。

構成

  1. Praeludio (Passaggio-Presto) 前奏曲
  2. Allemande アルマンド
  3. Courante クーラント
  4. Sarabande サラバンド
  5. Bourree ブーレ
  6. Gigue ジーグ

上に書いた通り、アルマンドの前に前奏曲が置かれ、サラバンドとジーグの間にブーレがはさまっていますね。

僕ブーレはピアノで弾いたことがあるので、一番有名なのではないかと目星をつけました。

とりあえずそれを聴いてみましょう。


Bach, Bourrée (BWV 996), Andreas Martin, Lute, HD

一目では数えられない位弦の数が多いですね・・・これは本当に調弦が大変そう。

この演奏は僕の持っているCDと調弦が違うようです。(かなり低い)

別のものも聴いてみると、それもまた別の調で弾いている。

どうもリュート演奏にはこういうことがよくあるらしい。

確かユングへ―ネルのCDの解説にも移調をしてある(曲がある)ということが書いてありました。

組曲はバッハの音楽のなかでは親しみやすいほうなのですが、曲数が多いし、踊りの名前が一度にでてくるので、わかりにくいといえばわかりにくい。

実際に踊りを踊ったり、見たりした経験があればよいのですが、なかなかそうはいきません。

というわけで次は舞曲をもう少し詳しくみるとともに、いよいよバッハの無伴奏作品の構成をみてみようと思います。

参考文献

リュートの響きは心が落ち着いてよいものです。

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4 件のコメント

  • こんにちは。
    私もバッハの無伴奏バイオリンソナタ、パルティータ、チェロ組曲大好きです。
    ピアノでインベンションとシンフォニアを練習しましたが、2声、3声と難しくなり四苦八苦しました。しかしこれを弦楽器でそれをやるとは…。
    私は最初に聞いたのがシェリングでした。それからいろいろな演奏家の録音を聞いてきました。演奏会で聞いたのは20年以上前の前橋汀子さんと昨年のC.テツラフです。最近買った録音は、全曲ではセルゲイ・ハチャトリアン、パルティータ2番だけではジャニーヌ・ヤンセン、ソナタ2番だけならリサ・バティアシュヴィリです。
    きつねさんは誰の演奏がお気に入りですか?

  • きらりんさん
    僕も聴き始めた頃にシェリングを聴きましたが、それ以来ずっと聴いています。
    シェリングはやはり”うまい”し音が澄んで綺麗なので、ああいう暗くて重たい曲でも聴きやすいですね。
    曲の性格がバラバラですから、この奏者はこの曲はいいけれどこの曲はいまいちだなあ、なんてこともありますよね。
    最近は古楽をよく聴くので、無伴奏に限りませんが、クイケン兄弟やアンナー・ビルスマの演奏もよく聴きます。
    聴いたことない奏者もたくさんいるので、色々聴いてみたいと思っています。

  • シェリングは最初に聞いて本当に良かったと思っています。
    なぜなら、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ベートーベンの協奏曲を最初に聞いたのが、父の持っていたLPのハイフェッツだったからです。子供の頃は今と違ってYouTubeもなく、マニアでなければLPもそう何枚ももってなかった時代です。ハイフェッツを繰り返し聴き、高校でラジオを聴くようになり、他の奏者の演奏を聴いてその違いに愕然としたものです。様々聴くと、ハイフェッツが特別なのだと理解しました。今は聞きくらべも楽にできていい時代になりました。

  • きらりんさん
    ハイフェッツしか聴いていなかったら、他の演奏を聴いた時確かに驚きそうですね。
    他の演奏を聴いたあとハイフェッツを聴いて驚くというのが普通でしょうから、貴重な体験ですね笑

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