みなさんこんにちは、きつねです。
日にひに暖かくなっていますね。
南の方はもう春爛漫でしょうか。
今回はクラシックを聴かない人にとって不可解であろう”聴き比べ”についてちょっと書いてみようと思います。
クラシック音楽の通な聴き方
クラシック音楽は作曲家と演奏家が分離してしまっているので、同じ曲を複数の弾き手が演奏するというやや特殊な状態にあります。
現代のポピュラーやロックにはこういうことは普通発生しません。
作った当人が演奏して、その人がいなくなればその音楽も忘れられるというのが、自然の在り方であって、西洋音楽の世界でも、古典派の時代まではそういう傾向にありました。
その流れが、19世紀になって変わり始め、音楽は博物的なものになってきた。
古い音楽を皆がこぞって演奏し、聴衆はそれを”聴き比べて”楽しむ。
同じ音楽を演奏しているのに聴き比べてなにが面白いのか?
クラシック音楽の演奏
同じ音楽を同じ楽譜によって演奏するのに違いが生まれるのか
という疑問を持つ方がいらっしゃるでしょうが、まず技術の差によって全然違うものになりうるのは当たり前のことで、僕が演奏するのと一流演奏家が演奏するのでは楽譜の忠実な再現という点で差がでます。
そしてこの通りクラシックでは、楽譜の忠実な再現がまず求められるのですが、楽譜を忠実に再現できれば、ここが重要なのですが、忠実に再現しなくてよい、という不思議なことになってくる・・・
こういう演奏論については今まで延々となされてきていて、色々みていると面白いのですが、とにかく、楽譜に忠実なクラシック音楽の演奏にも自由な余地がかなりあるといわけです。
とくにロマン派の音楽ではそれが極端で、即興的な要素が相当入ります。
演奏家の個性
演奏家によって個性がでるというのは、上に書いたような曲の演奏の仕方というものの他に、演奏家自身の質というのがあります。
演奏には流派があって演奏法が演奏家によって微妙に違います。
例えば、ピアノは普通手を丸めて弾きますが、平らな形で弾く人も稀にいる。
そうすると、音に違いが出てくる。
それに同じ個所であっても、どう弾くかによって結果が全然変わってきます。同じ箇所なのにある演奏ではスタッカート(短く跳ねるような弾き方)で、ある演奏ではテヌート(ベたっとした十分に音を保つ弾き方)ということもあり得る。
そして演奏法以外に、演奏家の身体の骨格というのも実は音に大いに影響があります。
まあこんな風に同じ曲でも、演奏家や他に演奏される場所、時間、機会と色々な要素が関わって全然違うものになりうるわけです。
全然違って何が面白いのか・・・といわれるとまあちょっと困るのですが、色々聴いてみると
ああ、こういう弾き方もあるのかあ
とか
ええ、こここんな風に弾くの
とか
これは素晴らしい、これしかない
とかなんとか、一流の人が演奏しているものはだいたい素晴らしい演奏なわけですが、その”一流の違い”とでもいうべきものを味わうのもクラシック音楽の楽しみというわけです。
それでは聴き比べてみましょう
聴き比べるのはメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲
この曲はもっとも人気のあるバイオリン曲の一つです。
同じ演奏家の録音を色々聴いてみるというのも面白いのですが、名演奏家の演奏をそれぞれ聴いてみる方がわかりやすく面白いので今回はそちらにします。
メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は演奏が始まってすぐにソロバイオリンが入ります。
冒頭 これは弦だけですが、管楽器も参加します。黄色の部分がソロバイオリン
今回はこの部分を聴いてみます。
Mendelssohn / Nathan Milstein, 1954: Violin Concerto in E minor, Op. 64 – Complete
ミルシテイン
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 ハイフェッツ/ミュンシュ Mendelssohn Violin Concerto e-moll op.64
ハイフェッツ
Mendelssohn: Violin concerto – Menuhin, Furtwängler – I – 1/2
メニューヒン
Mendelssohn / Arthur Grumiaux, 1974: Violin Concerto in E minor, Op. 64 – Complete
グリュミオー
Mendelssohn-Violin Concerto in e minor op 64 (Complete)
スターン
Mendelssohn Violin Concert, Mutter / Karajan Op.64- 1st Mov 1st PART
ムタ―
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 パールマン(Vn)
パールマン
このくらいにしておきましょう笑
バイオリニストは超有名どころから適当に選びました。
メンデルスゾーンの協奏曲は始めの部分どう歌うかというのが難しい曲だと思うのですが、そうですね、演奏者によって結構な差がありますね。
アレグロなので速度としては速いのですが、さらっとした音楽ではない。
ハイフェッツは速いですね笑
スターン遅めでしっとりしています。ムタ―も遅め
いや、実際はこんな冒頭だけ聴き比べるなんてことは(おそらく)しないのですが、こんなに違いますよ、ということを示すためです。
聴き比べるのはあるCD、演奏家で十分にその曲の全体をつかんでからするものかと思われます。
そうだ、よく
指揮者っている意味あるの?
って疑問に持つ方がいますが、これも大ありです。
あれ別に本番にだけ出てくるのではなく、事前に綿密な訓練をオーケストラに施すので指揮者によってかなり変わってきます。
ところで・・・
メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は名曲中の名曲で、
「世界三大バイオリン協奏曲」という仰々しい冠を与えられています。
他二曲はベートーベンとブラームスのものです。
このうちではメンデルスゾーンが一番聴きやすいかと思われます。
第一楽章は聴いていただいたとおり美しく哀愁をもった曲で、第二主題もロマンティシズム溢れる名旋律です。曲の真ん中にカデンツァがはさまるという珍しい曲でソリストの技巧が発揮されます。
第二楽章はこれまた名曲で、なんでしょう、こんなに暖かくて切なくて心にしみる音楽はなかなかありません。言葉にするとどうしても安っぽくなってしまいますね。
第三楽章は軽やかな元気のある曲で、僕の好きな曲です。
メンデルスゾーンの協奏曲はどの楽章も非常な魅力をもっていて、さすがに世界三大などと呼ばれるだけあります。
バイオリン音楽を聴いてみたい、という方はメンデルスゾーンの協奏曲から聴くとよいかもしれません。
僕も友人にチャイコフスキー(の協奏曲を加えて、「四大バイオリン協奏曲」と呼ぶこともあります)とメンデルスゾーンの協奏曲をおすすめしたことがありますが、しばらくたってどうだったか聴いてみると、ドハマりしたらしく、それからずっとその二曲を聴き続けたようです。涙がでるとまでいっていました(重傷)
人によりけりでしょうが、僕もチャイコン(チャイコフスキーのバイオリン協奏曲をこう呼ぶ)からクラシックに入門したのでこの二曲があるいは入門に適しているといえるかもしれません。
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